深草乃里は、高原の避暑地にあるホテルで女中頭をしています。彼女は、かつてヨーロッパ航路の客船で客室係を務めていた経験から、この仕事をしています。ある日、一組の客がホテルにやってきます。男はいかつい風貌で、女は下町育ちのお神さんタイプです。深草乃里は、その男から奇妙な質問を受け、胸騒ぎを感じます。彼女は、その男の視線に、なにか不気味な威圧を感じ、忘れかけていた紅海での出来事を思い出します。それは、二十数年前の秋、深草乃里が客船に乗っていた時のことでした。彼女は、夜の甲板で、宝石のように輝く緑色の星々を眺めていたのです。