「デカダン文学論」は、戦後間もない時代に書かれた、坂口安吾による論考です。西洋のデカダン文学を論じるのではなく、安吾自身の思想を表明したもので、当時の日本社会や文学、そしてそこに生きる人々の姿が、痛烈な言葉で描かれています。安吾は、日本の伝統的な価値観や道徳観、家庭観といったものを「幽霊」と呼び、それらが現代人の思考を阻害し、真の自我の探求を妨げていると主張します。特に「家庭」という概念に焦点を当て、それが生み出す閉塞感や、人間の自然な欲求を歪める様を、鋭く批判しています。また、安吾は、文学作品と作家との間に存在する「距離」に注目し、その距離が作家自身の不誠実さや魂の歪みを露呈していると指摘します。安吾は、文学を通して、真の自我を探求し、偽りの道徳観から解放されることを訴えかけているのです。