渋谷常盤松にある皇太子殿下の仮御所は、旧式の洋館です。皇太子殿下は、主に二階にある三つの部屋、御進講堂、御座所、そして「ピアノの間」と呼ばれる部屋で過ごされています。著者は毎週、皇太子殿下と共にこの部屋で本を読み、様々な話題について語り合います。部屋の東南隅の一角は、二つの窓から陽光が差し込む明るい空間で、著者は皇太子殿下と共にその場所で本を読み、語り合うようになりました。二人が共に読んだ本のなかには、英人サア・ハロルド・ニコルソンの「ジョージ五世伝」や福沢諭吉の「帝室論」、露伴の「運命」などがあります。著者は、皇太子殿下が読書に熱心に取り組んでおられることに感心し、その様子から時の流れを感じます。窓から眺める景色も変わり、戦火の傷跡は消え、新しい家屋が次々と建ち並ぶ様は、戦後復興の著しさを物語っています。