百足凧と呼ばれる、奇妙な形の凧。その製作者は、相州小田原町に住む老人に一人だけだと伝えられています。かつて、作者は、語り手の少年に百足凧を贈ったことがありました。大人になった語り手は、再びその凧を求めて老人の住む村を訪れ、一か月ほど彼の製作を手伝います。老人は聾者になっていましたが、語り手は彼の静寂な世界に惹かれ、冬になると彼の住む村を訪れるようになります。老人はやがて亡くなってしまい、語り手は彼の残した百足凧の図面を見つけるのですが、その製作には自信がありません。村には他に製作者が三人いるという噂を聞き、語り手は再び村を訪れ、百足凧を上げようと試みますが、うまくいきません。彼は、老人が作った百足凧を眺めながら、彼の技術を懐かしむと共に、村で百足凧を上げられる者を探し求めるのでした。