戦後五年の日本文学は、社会性やリアリティの追求を課題としつつも、深みへの探求を怠り、停滞している。多くの読者だけでなく、作家自身も心の底から、真に社会と歴史を反映した、理性を覚醒させるような文学を切望している。この時代に、作家は、過去の方法にとらわれず、社会主義リアリズムという新たな視点から創作方法を問い直さなければならない。そのためには、自身の経験を土台に、細部まで見極め、社会と人間の有機的な関係を歴史的な視点から描き出すことが求められる。著者は自身の作品「二つの庭」と「道標」を例に挙げ、社会主義リアリズムによる創作方法の模索と、その難しさについて語っている。