晩秋、東京の景色に心を惹かれないまま、旅に出ることを決めた「私」は、伊賀、伊勢路へ向かう汽車の旅に出ます。汽車の中で、旅の計画を練り、車窓から移り変わる風景を眺め、かつての殿上人が抱いていたであろう旅情に思いを馳せます。やがて名古屋に到着し、関ヶ原や古の不破の関所のあったあたりを歩いてみたいという思いを胸に、湊町行きの汽車に乗り換えます。鈴鹿峠を越え、土山、水口へと足を進め、伊賀上野を目指す「私」は、芭蕉翁の故郷や鍵屋の辻など、歴史と文学の香りに満ちた場所を訪れます。そして、吉野への旅を夢見て、名張へと向かうのでした。