戦後間もない東京、小さな酒場「五郎」を舞台に、異国の文化人・秦啓源と日本人の波多野洋介の奇妙な友情が描かれます。二人の共通点は、不思議なほど意見が合うこと。しかし、その出会いは、互いに名前も知らないまま、ある文化的会合での短い会話だけでした。二人の関係は、酒場での川蟹を肴にした会話から、次第に深まります。やがて、波多野の母方の遠縁にあたる魚住千枝子が加わり、二人の関係は複雑さを増していきます。謎めいた雰囲気漂う千枝子の存在、そして、彼女に憑りつくという美春さんの奇怪な体験。二人の男性は、千枝子を取り巻く不思議な出来事に翻弄され、その関係は、更なる深淵へと突き進んでいきます。