長谷川時雨の「桑摘み」は、都会育ちの作者が、かつて兵庫県和田の岬で見た桑畑での風景を、自身の幼少期の思い出を交えながら、静かに描写した作品です。桑の葉を摘む女性たちの姿は、美しく、力強く、そしてどこか哀愁漂うものとして描かれます。都会の子供だった作者が、初めて蚕の繭に触れたときの喜びと、その繭から羽化した蛾を見たときの驚き、そして、蚕と桑畑、そしてそれを支える人々の生活の厳しさを、繊細な筆致で語りかけてきます。都会の喧騒とは異なる、田園風景とそこでの暮らし、そして人々の営みが、鮮やかに浮かび上がってくる、印象的な作品です。