文明元年の二月、雪が降り積もる奈良の町を、連歌師の貞阿は東大寺へ向かう。戦乱に荒廃した京の様子を伝えるため、かつての師であり友人の玄浴主を訪ねるためである。玄浴主は深井坊という塔頭に住み、風呂好きで寝酒も好む人物だ。貞阿は、戦乱の話を語りながら、かつての主人・一条兼良の変わり果てた姿や、幼少の頃から仕えてきた松王丸の生涯について語る。松王丸は、武衛家の家督を継いだが、策略によって廃され、のちに蔭凉軒の真蘂西堂のもとで修行した。貞阿は松王丸の物語を通して、戦乱の時代における人間の愚かさ、運命の残酷さを、そして新たな時代への希望と不安を語り出す。