「阿部正雄君のこと」は、劇作家である阿部正雄氏の戯曲「骨牌遊びドミノ」に対する、岸田國士による批評です。阿部氏は世間のことをよく知っており、少しばかり世の中を甘く見ている一面も持ち合わせています。客観的な視点を持つよう努力しているものの、その自信が強すぎて、作品中の人物に対して感情的な配慮が不足している部分も見られます。阿部氏は才能豊かな人物ですが、その才能が観察力や想像力よりも、スピード感に傾倒しているように感じられます。そのため、作品は現代的なテンポを持つ一方で、新鮮な魅力に欠けてしまうのかもしれません。しかし、岸田國士は、阿部氏の中に残る独特の感性こそが、ただの感傷的な虚無主義者を超えた何かであると確信しています。