利助は、京都で活躍した陶器の名人でしたが、生前はほとんど知られることなく、世を去りました。彼の作品は、繊細で優美な美しさを持つ薄手の陶器に、藍や金粉で花鳥や動物が精緻に描かれたものでした。しかし、時代とともに作品は散り散りになり、ほとんどが失われてしまいました。それから百年近く経った頃、利助のさかずきが、ある骨董店で発見されます。その美しさに魅せられた男は、さかずきを手に入れ、大切に使い続けました。やがて、さかずきは男から息子へと受け継がれ、先祖の霊を慰めるために使われるようになりました。しかし、時の流れとともに、さかずきの価値を知る人は減っていき、ついに孫の代では、その価値が分からなくなってしまったのです。