老巡査の睦田は、真夜中の別荘地帯を巡回中、奇妙な吸殻を踏みつけます。その吸殻は、金口の煙草の吸いさしで、何者かが最近投げ捨てたものでした。しかし、睦田は、その吸殻に何の関心も示さず、そのまま巡回を続けます。彼は、無能で平凡な巡査人生を送っており、事件が起きるたびに不安を感じながらも、家族のために辞職することもできずにいました。ある夜、睦田の管轄区域内にある倉川男爵家の別邸で強盗殺人事件が発生します。事件の発生時刻は、睦田が巡回していた時刻と一致しており、彼は署長から激しく叱責されてしまいます。事件は迷宮入りし、睦田は罪悪感と無力感にさいなまれます。それから一年後、睦田は巡査を辞め、製作工場の門衛に転職します。彼は、仕事中に新聞を読み、小説や講談に心を奪われ、特に弱き人々が幸運に恵まれる場面に感動し、自分自身を重ねていました。しかし、ある日、新聞で一年前の強盗殺人事件の犯人がまだ捕まっていないことを知り、愕然とします。犯人は、その後も各地で悪事を働き、警視庁の無能さを嘲笑っているとのことでした。睦田は、事件の責任を痛感し、罪悪感にさいなまれます。ある日、睦田は工場の門前でルンペンたちと出会います。その中の一人が、金口の煙草を吸っていることに気づき、睦田は一年前の事件を思い出します。そして、ルンペンの言葉を聞きながら、犯人の手がかりを掴んだような予感がします。