あらすじ
白菜は、本来は中国の青島産ですが、日本でも古くから親しまれてきました。しかし、暖地の東京では、品質があまりよくないと言われています。白菜の料理は、魚や肉をより美味しく引き立てる役割を果たします。
魯山人が特に薦めるのは「白菜のスープ煮」です。鶏の骨を砕いて作った澄んだスープで白菜を煮込み、塩だけで味を調えます。醤油を使うと白菜の白さが損なわれてしまうため、塩味にすることで、白菜本来の白さと甘さを最大限に引き出すのです。
器に盛るときは、薬味を添えて、見た目も華やかに仕上げます。中国料理の要素も感じられる、まさに魯山人ならではの、シンプルながらも奥深い一品です。
 白菜の煮方などは、一般にあまり吟味したやり方が行われていないと思うので、とりあえずここで扱うことにした。
 白菜というものは、元来中国青島(チンタオ)の産であるが、昔から朝鮮にも多く栽培されていた。これは寒帯にできる野菜であるから、東京辺つまり暖地のものは、品質があまりよくないといえよう。
 白菜の料理は、魚や肉には軽い調節になってよいものだ。白菜は純日本のものではないから、いわゆる日本料理として扱いにくいものの部類に属している。しかし、白菜のスープ煮というものはなかなか気の利いたものである。鶏の骨ばかり(肉のまじらないもの)叩きつぶしてスープを取る。肉のまじったもののスープは、味が俗になってだめだ。このスープは塩で味をつけるのがよろしい。この場合醤油は用いない。醤油では色がついて、白菜の白さを汚してしまうから感じが悪い。あの白い白菜の色を殺してしまうと、よそゆきの料理にはならない。醤油はヤマサ、キッコーマンはもちろんのこと、薄口にしても色がつく。それではお惣菜になってしまう。白菜のスープは純白であること、白菜が白菜そのままの色を保っていることが貴いのである。
 次に味についても、白菜自体の甘味があるから、やはり塩で加減するのがよろしい。煮えたものを器に盛るときは、薬味を用意しておいて添える。
 これは日本の新料理であるが、中国料理のやり方も発見されるし、朝鮮料理の気分も味わえるであろう。白菜の切り方や、器の選び方によって、日本料理の感じもする。そして、これは他の料理とも調和する。簡単だから悪い料理ではないといえるだろう。
(昭和九年)
了

底本:「魯山人著作集 第三巻」五月書房
   1980(昭和55)年12月30日
初出:「星岡 38号」星岡窯研究所
   1934(昭和9)年1月
入力:江村秀之
校正:木下聡
2021年5月27日作成
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