あらすじ
関東大震災という未曾有の災害に見舞われた日本。著者は、この混乱の中、人々を守るために活躍する軍隊の姿に大きな感銘を受けます。自然の猛威の前に、人々は無力であり、秩序と安全を守るためには、力強いサーベルが必要だと説くのです。時代を先取りする知識人たちは、この危機の中で、自分たちの理想や主義をいったん脇に置き、軍隊の力に頼らざるを得ない状況に置かれます。災害の脅威と、それを鎮める軍隊の威光、そして時代が求めるものとは何か、著者は鋭い視点で問いかけます。
 小生が、今度の変事で最も感心したことは何と言っても軍人の威力である。――自然の威力に就ては何も今さらではないから。ところで一(いっ)たい、天然の災害に対して剣つき銃の出動を俟(ま)たざるを得ざるかの如きは、その理由が何から発しているかを知らず最も不泰平の象ではあるまいか。邦家及び市民の名誉だなどとは決して誰も言うまい。しかもその軍隊が無かったら安寧秩序が保てなかったろうと考えさせられるのだから、この際、御同様、礼讃すべきものはやはり威光燦(さん)たるサーベルではあるまいか。さればこそ、恐らくは時代の先駆を以て自任するすべての雑誌などからは当分「所謂(いわゆる)主義者」の名前などは影を没するであろう。如何(いかが)でしょう、天下の雑誌経営者諸君。
了

底本:「天変動く 大震災と作家たち」インパクト出版会
   2011(平成23)年9月11日第1刷発行
底本の親本:「改造 第五卷第十號」改造社
   1923(大正12)年10月1日
初出:「改造 第五卷第十號」改造社
   1923(大正12)年10月1日
入力:持田和踏
校正:noriko saito
2022年8月27日作成
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