あらすじ
書を見る喜びを、高村光太郎は自身の言葉で表現しています。絵画よりも書に惹かれる理由は、飽きることなく、心身を休ませ、活力を与えてくれるからだと語ります。六朝碑碣の拓本や唐宋の法帖、日本のかななど、様々な書の魅力を、自身の言葉で熱く語り、書を見る楽しさを力強く伝えています。
 書を見てゐるのは無條件にたのしい。畫を見るのもたのしいが、書の方が飽きないやうな氣がする。書の寫眞帖を見てゐると時間をつぶして困るが、又あけて見たくなる。疲れた時など心が休まるし、何だか氣力を與へてくれる。六朝碑碣の拓本もいいし、唐宋の法帖もいいし、日本のかなもすばらしい。直接書いた人にあふやうな氣がしていつでも新らしい。書はごまかしがきかないから實に愉快だ。

底本:「高村光太郎全集第五卷」筑摩書房
   1957(昭和32)年12月10日初版第1刷発行
   1995(平成7)年2月20日増補版第1刷発行
初出:「書道全集 内容見本」平凡社
   1954(昭和29)年3月発行
入力:岡村和彦
校正:nickjaguar
2019年2月22日作成
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