あらすじ
「寄贈書籍」は、雑誌『青鞜』に掲載された伊藤野枝による書評です。当時話題になったばかりの二冊の本を題材に、その内容や著者の個性について、独自の視点で批評しています。特に、ストリンドベルヒの「痴人の懺悔」については、翻訳の質の高さを評価しながら、女性の読者への強いメッセージを感じ取ることができます。一方、青柳有美の「美と女と」については、その内容や著者の容姿について、ユーモラスかつ辛辣な筆致で評しています。文学と社会、そして女性への深い洞察が光る、伊藤野枝ならではのエッセイです。 (ストリンドベルヒ著[#改行]木村荘太訳) (定価一円六十銭[#改行]洛陽堂発行) ストリンドベルヒの自伝の一部で氏の最初の結婚生活を書いたもので御座います。この小説は是非誰にも一読して欲しいものと思ひます。殊に多くの婦人達に――私は本書の内容についてはあまり多く申しません、訳も極めて叮嚀な隅々まで理解のとゞいた立派なものだと思ひます。並々ならぬ苦心のあとも見えます。訳者も巻末に「この小説は今自分に取つて殆んど理想的な小説である。自分はこの訳本を重訳ではあるがその理想的さ加減を略遺憾なく伝へてゐると公言する」と云つてゐられます。
青柳有美著
(定価 壱円弐拾銭[#改行]実業之世界社発行) 先生の序文を拝見しますとこの本には「美術と美学とに関する古今独歩の識見が披瀝せられてある。文芸に関する突飛卓抜の意見が開陳せられてある。女と性欲とに関する問題が研究せられてある。」さうです。そして「健全で、面白くつて、有益で、安い書籍」ださうです。これは本屋の広告ではなく、先生御自身の御証明ですから、間違がないことゝ存じます。巻頭には例によつて先生の御肖像があります。身体を七分三分にヒネツタ頗ぶる「卓抜非凡」の御容子です。内容はその「新吉原改良論」より巻末の「脚本白拍子祇王」に至るまで、一々「独創の識見」に満ちた御作です。先の「女の話」と並せて読めば更に沢山な御利益があることゝ存じます。
[『青鞜』第五巻第六号、一九一五年六月号]
了
底本:「定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代」學藝書林
2000(平成12)年5月31日初版発行
底本の親本:「青鞜 第五巻第六号」
1915(大正4)年6月号
初出:「青鞜 第五巻第六号」
1915(大正4)年6月号
入力:酒井裕二
校正:Butami
2020年9月28日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。