あらすじ
酒は誰でも酔わせるけれど、優れた詩は字の読めない人には届かない。それなのに、酒の方が詩より優れていると考える人がいる。世の中には、「生活第一、芸術第二」と嘯く人もいるのです。自然が美しいのは、絵画のキャンバスの上でも美しいということでしょうか。経験を否定すれば、面白い詩は生まれないでしょう。しかし、「それを以てそれを現すべからず」という言葉も忘れちゃいけません。科学は個々だけを考え、文学は関係ばかりを考えすぎる傾向があります。文士よ、世の中は辛いものですが、その中に飛び込んでいかなくてはなりません。だがどんな傑れた詩も
字の読めない人は酔はさない
――だからといつて
酒が詩の上だなんて考へる奴あ
「生活第一芸術第二」なんて言つてろい
自然が美しいといふことは
自然がカンヴァスの上でも美しいといふことかい――
そりや経験を否定したら
インタレスチングな詩は出来まいがね
――だが
「それを以てそれを現すべからず」つて言葉を覚えとけえ
科学が個々ばかりを考へて
文学が関係ばかりを考へ過ぎる
文士よ
せち辛い世の中をみるが好いが
その中に這入つちや不可ない
了
底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩」角川書店
2001(平成13)年4月30日初版発行
※底本のテキストは、著者自筆稿によります。
※()付きの表題は、作品の冒頭をとって、底本編集時に与えられたものです。
※()内の編者によるルビは省略しました。
入力:村松洋一
校正:きゅうり
2019年12月27日作成
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