あらすじ
女は、吸取紙を早くかせ、恵まれぬものが何処にあるのか問いかけます。彼女は道草を摘み、飛行機が分裂する様を眺め、縫い物をしながら秘密を織り込みます。男の目的を知らないと語る女は、鋏を畳の上に出したまま出て行ってしまいます。彼女は自分に理窟をつけずに英雄崇拝をし、男より偉いのです。吸取紙を早くかせ
恵まれぬものが何処にある?
マッチの軸を小さく折つた
女
自分は道草かしら
女は摘草といふも勿体ないといつた
俺は女の目的を知らないのださうだ
原因なしの涙なんか出さないと自称する女から言はれた
飛行機の分裂
目的が山の端をとぶ
縫物
秘密がどんなに織り込まれたかしら
女は鋏を畳の上に出したまゝ
出て行つた
自分に理窟をつけずに
只管英雄崇拝
女は男より偉いのです
了
底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩」角川書店
2001(平成13)年4月30日初版発行
※底本のテキストは、著者自筆稿によります。
※()付きの表題は、作品の冒頭をとって、底本編集時に与えられたものです。
※()内の編者によるルビは省略しました。
入力:村松洋一
校正:鳩
2017年6月20日作成
2018年4月25日修正
青空文庫作成ファイル:
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