あらすじ
男であるタバコと女であるマントは、互いに愛し合い、運命を共にすることを決意します。二人は、身を投げて果てようとするのですが、マントは重く、タバコは軽いため、崖から海面まで落ちる時間は同じでした。神様は、二人の行為を「相対界のノーマル事件」と呼び、天国で話題にし、二人はそれを知ります。愛する者同士が共に過ごすはずだった永遠の時間が、その瞬間、失われてしまうのです。
タバコとマントが恋をした
その筈だ
タバコとマントは同類で
タバコが男でマントが女だ
或時二人が身投心中したが
マントは重いが風を含み
タバコは細いが軽かつたので
崖の上から海面に
到着するまでの時間が同じだつた
神様がそれをみて
全く相対界のノーマル事件だといつて
天国でビラマイタ
二人がそれをみて
お互の幸福であつたことを知つた時
恋は永久に破れてしまつた。

底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩」角川書店
   2001(平成13)年4月30日初版発行
底本の親本:「文学界 第五巻第一〇号」
   1938(昭和13)年10月1日発行
入力:村松洋一
校正:館野浩美
2018年4月25日作成
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