あらすじ
「迷つてゐます」は、筆を持つ行為に深く悩み、葛藤する作者の心情を、鋭い言葉と大胆な比喩で表現した詩です。文明がもたらした「筆」という道具に翻弄されながらも、その筆を折るか、そのまま使い続けるか、苦悩する作者の姿は、現代社会においても共感を呼ぶでしょう。詩の言葉一つ一つに込められた作者の切実な思いを感じながら、あなた自身の「筆」について、深く考えてみてください。それ程足りた心があるか
だつて折れない筆がありますか?
聖書の綱が
性慾のコマを廻す
原始人の礼儀は
外界物に目も呉れないで
目前のものだけを見ることでした
だがだが
現代文明が筆を生みました
筆は外界物です
現代人は目前のものに対するに
その筆を用ひました
発明して出来たものが不可なかつたのです
だが好いとも言へますから――
僕は筆を折りませうか?
その儘にしときませうか?
了
底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩」角川書店
2001(平成13)年4月30日初版発行
※底本のテキストは、著者自筆稿によります。
※()内の編者によるルビは省略しました。
入力:村松洋一
校正:hitsuji
2020年3月28日作成
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