あらすじ
聖堂の近くを毎日通る「私」は、教会堂の神秘的な物語や歴史に思いを馳せます。人類は永遠に争いを続ける運命にあるのか、それとも新たな歴史を刻むことができるのか。静かに雪が積もった朝の光景は、そんな「私」の問いに答えるかのように、聖なる美しさをたたえています。ポプラの梢の空高く大空を指さして
厳かな聖き自然の力を表わす
幹はだの荒くれた並木の下に
ヘブライ文化の主流である
キリスト教の教会堂が建っている
私は毎日その近くを過ぎる
そして神秘な古典の物語りを思い出し、ありし昔の日の幾多重ねた争闘の人間に与えし歴史を憶う……
人間と言う極まりない霊魂の所有者はかくして永遠に
血を浴びて闘わねばならないか
宇宙の覆滅
人類の滅亡
ああその日まで
どんな歴史を作るであろう
今朝公会堂の前にはこすばかり
疲れしけものの野心なき眠りの如くに
ほんのりと軟かな雪が積もっていた
そして未だ誰も蹴散らしたものもなく
純白なよどみのない曲線を持ったそれこそここにはふさわしい聖らかな美しさがあった
了
底本:「今野大力作品集」新日本出版社
1995(平成7)年6月30日初版
初出:「旭川新聞」
1924(大正13)年3月29日
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年2月17日作成
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