あらすじ
始皇帝が築いた万里の長城のように、どこまでも続く山脈がそびえ立っています。人々は駅路をたどり、故郷を離れ、様々な思いを抱きながら旅を続けています。その中で、ある男は太古の森へ分け入り、また別の男は禿山に立ち、故郷の海を思い浮かべています。しかし、この山脈の彼方には、地の海ではなく、天の海と呼ばれる広大な海が広がり、そこには巨大な白鯨が泳いでいるのです。白鯨を追いかける捕鯨者たちの姿は、この世の中を映し出すかのようです。長城の如けん
うねうねと連らなる山脈
駅路より駅路へ
人は人をたよりて
母を父を子を友を同胞を
旅するものの心つたえて
赤き逓送車のまわりゆくまで
極みなき地平の物語り出る物語り
丘に上り我は今日も
駅逓の旗を見ん
(郷土は峡谷に馥郁たる香の花を秘めて
知られざる時代に埋もれゆくよ)
太古の儘なる森林に入りて
もの思う男もあり
禿山の頂に立ちて
山脈の彼方なつかしの海にあらずやとふるさとへの思いをよせる男もあり
されど、されど
始皇よ
長城の如けん
うねうねと連らなる山脈の此方にありて
日常見る
地の海ならじ
天の海をゆく
白鯨のありて
そを追える数多の捕鯨者
我世の中を過ぎゆくなり
了
底本:「今野大力作品集」新日本出版社
1995(平成7)年6月30日初版
初出:「旭川新聞」
1927(昭和2)年1月22日
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年1月6日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。