あらすじ
かつて豊かな自然に恵まれた故郷は、今や荒れ果てた姿に変わってしまっています。清流は濁り、美しい森は焼失し、かつてそこに息づいていた生き物たちの姿も消え去りました。故郷の人々は、失われた自然を嘆き、忘れられた過去の記憶を思い返しています。しかし、彼らの心には、故郷への深い愛と、失われた風景への切ない願いが残り続けています。小川は濁っている
ヤマメ、イワナのようなうまい小魚はもうそこへはのぼって来ない
淀みにはどぶ臭い雑魚が居り
廿年の昔の清冷な流れの面影がない
*
連なる丘陵は
ただ禿山であり
焼けたエゾ松の根株が淋しく黒く佇んで居り
昔そこに美しい針葉樹林があり
楡、タモ、栓、楢、紅葉、桜、胡桃、白椛の林があって
小鳥や兎達の楽しい場所であったことは
きれいに忘れ去られている
*
部落の人々は何を考えているのか
娘のたのもしい夫のことでもない
息子のきれいな気の利いた嫁のことでもない
土地が自分のものであったら
今年の収穫が高くうれたら
了
底本:「今野大力作品集」新日本出版社
1995(平成7)年6月30日初版
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年1月16日作成
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