あらすじ
春の夜は、花開く季節の到来を告げ、静寂の中に生命が目覚める時です。柔らかな風が吹き、若葉が輝き、心は希望に満ち溢れます。しかし、その美しさの中に、儚く消えゆくものを感じ、詩人は喜びと悲しみの狭間で揺れ動きます。はつざきのはなさうび、さきいでて、
このゆふべかぜぬるし、はるはきぬ。
あけぼのを、まつやかのにはたたき、
あさみどり、わかえだにうつりなく。
うたびとよ、こといだけ、くちふれよ。
たにまのけしきさとくらく、
おぼろにかすむはざまかな。
かつきさうぞくやさかたの
もりのあたりをうかびでて、
いまはたのべをすべりくる
すあしのまへに、はなあかし。
ゆめか、うつゝか、かつみえて、
かつほろびぬるたゝずまひ。
了
底本:「上田敏全訳詩集」岩波文庫、岩波書店
1962(昭和37)年12月16日第1刷発行
2010(平成22)年4月21日第38刷改版発行
初出:「明星 午歳・四」
1906(明治39)年4月
※「La Nuit de Mai(五月の夜)」の冒頭の二聯を訳したものです。
入力:川山隆
校正:岡村和彦
2013年1月10日作成
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