あらすじ
鉄橋を渡ると、そこには広大な地帯が広がっています。海を埋め立て、粗末な街が次々と建設され、犯罪が花開くその地は、まるで美しい花畑のようです。堀割の水は濁流となって流れ、溺死体が流れ着き、肥料船が行き交い、浚渫船の力強い動きが目に飛び込んできます。恋人を連れて、この地帯を歩む「僕」は、彼女の心臓が美しい無機物であることに気づくのです。
鉄橋を渡れば展けてゆく膨大な地帯。
海をめて
粗野な街をひろげてゆく健康な三角洲を
けなげな犯罪が花畑のやうに美しいほとりを
堀割の麗しい濁流に沿ひて
鮮な溺死体を迎へ
涼しい肥料船へあひさつをかはし
ゆくてには水沫をあげる浚渫船の耀ける筋肉
また、たえまなく僕らの眼に錯綜する鉄線路の鮮明な東西南北
雪をかむつてくる貨物列車
またもや前進してくる鉄材運搬車のたのしい地ひびきを越え
はるか海岸線を飾つてゐる貨物船の美しい無表情よ。
いろんな人種を持つて
海をおひやつて広がるこの地帯のなかを
ぼくの恋びと!
この売春婦はつよい股で渉つてゆくのである。
その心臓は美しい無機物なのである。

底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:良本典代
2017年11月24日作成
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