あらすじ
満天の星空の下、椅子に座る「おれ」は、騒がしい猿たちの賑やかな息吹を感じています。降り出した雨は、静かに街を包み込み、露路の奥へと流れ込んでいきます。雨は「おれ」をたたきつけますが、「おれ」は椅子から動くことはありません。濡れることこそが、この「冒険」なのです。しかし、心配なのは、糊のきいた着物を着た「めす」が風邪をひいてしまうこと。明日の仕事にも影響するかもしれません。
騒しい仔猿たちいね
こちらをむいて雌はしばしの憩ひ
おれは些少の空地に椅子をだしておれのうへに満天の星座
おれが空気を呼吸すればかれらも天の青い層をとほして賑やかに息づくかに見えるのだが
さて 雨ありてたちまちこの界隈
この露路の奥
雨はしづかに市にふる
雨の車軸よ おれを恣にこの界隈を敲くがよい
おれは椅子に動かない
おれにはできる濡れること!
滑稽ながらこれが首題みだしの冒険だ
めすよ 糊のきいたゆかたが心配
はて 風邪をひくのはよいけれど明日のつとめがきにかゝる

底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:良本典代
2017年6月19日作成
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