あらすじ
青い大きな船に乗り、旅立つ「僕」。痩せ細った肩には新しい紺色の服が、潮の香り高く漂います。月明かりは、胸から背中へ抜けてしまい、長い影もありません。静かな航海は寂しく、陽気な音楽もなく、月明かりの先には、誰もいません。弟も、母も、友だちも。船尾の寂しい旗の下に立つ「僕」だけが残されます。静かな航海は、本当に寂しいのです。
青い おほきい船にのつてゆかう。
ほんとうに痩せてしまつたぼくの肩
あたらしい紺飛白ばかり匂ひがたかいよ。
月あかりは胸から背なへぬけてしまつた
ほそながい影ひとつ ぼくのうしろへ映つてゐやしない。
たゞ青くつて
しづかな航海はほんとうにこころぼそい
楽隊ずきのペンギン鳥が氷の島に
月のしたに並んでゐたつて
陽気な唄も
銀笛ひとつ持ちあはしてはゐないのさ。
月あかりの向ふにみんなみんな消えていつた
弟のやつも 母も 友だちも消えていつた

船尾にうごくさびしい旗と。
旗のしたに立つた僕と。
たゞ青くつて
しづかな航海はほんとうにこころぼそい。

底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:良本典代
2017年8月25日作成
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