あらすじ
郊外電車の火花が、まるで月が瞬いているように見える夜、主人公は街角の飯屋で食事をしています。どんぶりを抱え、麦飯の湯気を吸い込みながら豚汁をすすり、沢庵の風味を噛みしめる、至福のひととき。雨の音が聞こえ、季節はいつの間にか初夏へと移り変わっていました。
カアテンのかかったガラス戸の外で
郊外電車のスパァクが お月さんのウィンクみたいだ
大きなどんぶりを抱くようにして ぼくは食事をする
麦御飯の湯気に素直な咳を鳴らし どぶどぶと豚汁をすする
いつくしみ深い沢庵の色よ おごそかに歯の間に鳴りひびく
おや 外は雨になったようですね
もう つゆの季節なんですか

底本:「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」藤原書店
   2001(平成13)年11月30日初版第1刷発行
   2002(平成14)年8月30日初版第5刷発行
入力:坂本真一
校正:雪森
2014年10月13日作成
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