あらすじ
銭湯へ向かう道すがら、麦畑を通り過ぎる男。大きな暈をまとった満月は、まるでオムレツのようです。熟れた麦の強い香りは、男の胸に、いなくなった「かのおなご」の記憶を呼び覚まします。麦の穂を噛みしめながら、男は、胸に響くチイチイという音に耳を傾けるのでした。麦畑をとおる
オムレツ形の月
大きな暈をきて
ひとりぼっち
熟れた麦
強くにおう
かのおなごのにおい
チイチイと胸に鳴く
かのおなごは
いってしまった
あきらめておくれと
いってしまった
麦の穂を噛み噛み
チイチイと胸に鳴く
了
底本:「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」藤原書店
2001(平成13)年11月30日初版第1刷発行
2002(平成14)年8月30日初版第5刷発行
入力:坂本真一
校正:雪森
2014年11月14日作成
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