あらすじ
それは、言葉の力に翻弄される男の物語です。彼は、己の言葉が乾酪や麦酒のように、光を失い澱み果てていることに気づきます。言葉を失い、沈黙に包まれた彼は、苦しみながらも、善きことをしようと決意します。その決意は、無声のうちに、静かに、力強く響き渡ります。
修利修利 摩訶修利 修修利 娑婆訶
 己のうたいし ことのはのかずかずは 乾酪チイズのごと 麦酒ビイルのごと 光うしないて よどみはてしは わがこころのさまも かくありなんとの あかしなるべし
 うたうまじ かたるまじ ただ黙々として 星など読まん 風などきかん 口業のあさましきをおもいて われ 黙して 身をきり 臓をさいなまん ただ苦業こそよけれ ただに涅槃ねはんをおもい 顔色を和らげ 善きことせん 無声もて 善きことせん

底本:「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」藤原書店
   2001(平成13)年11月30日初版第1刷発行
   2002(平成14)年8月30日初版第5刷発行
※表題は底本では、「口業(こうごう)」となっています。
入力:坂本真一
校正:雪森
2014年10月13日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。