あらすじ
秋の日は、木々の葉を落としていきます。白く光る眼は、何もかもを見つめ、何もかもを見逃しません。そこには、暗闇に消えていくもの、そして、かすかな音だけが響き渡る静寂の世界があります。 
秋の木の葉がふるひ出す、
ものにおびへた眼の色は、
たゞ白びかり――何を見る。
ひら/\と黄葉がちる、
彼れは何処へ? 真暗な、
谷へほこらへ――あな消へた。

暗い森から鳥が啼く、
あなほろ/\と、そこなりに………
ある触るる音よ、暮るる日の
天と人とのなかを過ぐ。
食ひのこしたるパンの切れ、
ぢつとみつめば、涙ぐむ。

白髪頭のお爺さん、
曲つた腰もかまはずに、
物識り顔に世を渡る。
前にあるのは何かいな、
後ろにゐるのは誰れかいな、
静かに眼ひらき見よ!
前にあるのは白き家、
後ろにあるは、黒き影、
なかのお爺さんそを知らぬ。

空が焼けた、真紅にやけた!
悪しき獣を屠つたやうに………。
空の自然□鏡なら、
人間道 悲惨な心、
写し出した地獄□か?了
底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩」国書刊行会
1991(平成3)年6月6日第1刷
初出:「沖縄毎日新聞」
1912(大正元)年11月6日
※初出時の署名は「浪笛」です。
入力:坂本真一
校正:良本典代
2016年9月9日作成
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