あらすじ
死を目前にした者、そしてそれを取り巻く人々の心の揺れ動きが、静かに、しかし力強く描かれた作品です。秋の夜、静寂の中に響く、かすかな音と、生と死のはざまで揺れる感情が、読者の心を深く揺さぶります。病めるもの衰へしもの、
床の上にすなほに僵れ、
瓶の身は砕けてちりて、
滅亡に入らむ。
床の上に破れぬ、花瓶、
されどそが『こゝろ』は如何に、
すなほにと云へど、やさしき、
砕けにはあらず、はげしく
叫ぶを聞きぬ。
人の子は瓶にもあらず、
運命は運命と観て、
秋のくれ、死ぬるといふ夜、
ほのかなる燭の火のかげに、
題目をこそ――
蝋燭はかすかに音し、
黄ばむ火は寒げに揺れぬ。
刻々に面がはりゆく
あゝ死相――刹那よ黒く、
つくは呻吟。
破瓶を画師うち抱き、
死人を法師みちびき、
秋の野へ、葬りの途に、
また聞きぬ、見ぬ、黒牛の
これも呻吟。
了
底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩」国書刊行会
1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:フクポー
2018年10月24日作成
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