あらすじ
病床の「吾」は、母から鼠の子を籠に入れてもらいます。指先でそっと触れ、その小さな命に心を慰められます。鼠の子は、ピンク色の耳と鼓動する血管が、生き生きとして愛らしい存在です。やがて夕暮れが訪れ、牛乳の時間になると、鼠のことは忘れ、窓の外の青葉を眺めながら牛乳を飲みます。
母、吾が為に
鼠の子虫籠に入れて与へぬ
病間の徒然なる
吾指もて小づき戯れ
心明るう時を経にけり。
あはれ鼠の子まこと子なれば
耳孕[#「耳孕」はママ]桃色に 血管ちすぢの脈打つも生物いきものらしく
今は前肢を捧げ餌食みゐるも※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)たけし。
やがて夕べの風出でぬ――時を経ぬ間に
何時か牛乳ちちの時間となりぬれば
吾鼠の事も忘れ
青葉繁れる窓に
牛乳ちちを飲みゐたり。

底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:フクポー
2018年3月26日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。