あらすじ
厳しい労働に明け暮れる男は、ごつごつとした自分の手を「運勢」と呼び、人生の苦しみを嘆きます。借金に追われ、役場の赤紙にも怯える日々。それでも男は、地主の倉に種を蒔き、収穫を夢見ています。夜の星の下で鋤を洗い、朝の星の下で鎌を研ぐ男は、真赤な朝日を目にし、希望を感じます。そして、町の工場で働く弟からの便りを待ち焦がれる男は、鎌をぎゅっと握りしめ、明日への決意を新たにするのです。
腰を下して
膝かぶに
のっけたたなごころ

俺らの運勢をみろ
ごつごつの節くれ奴

大根 ごっそりひきぬいて
町さ うんとこ運んでも
伜の
雑記帳と読本は軽いもんだ
なあ女房
いくら人参が好物だって
こらえて呉ろよ
鎮守のたなに借があるだぞ
役場の赤紙も溜ってるだ

ごつごつの節くれ奴!
一生
運勢だとあきらめて
地主の倉に
種を蒔いているだか
てい
俺らの収穫とりいれはいつの秋だ

夜の星 すきを洗って
朝の星 鎌を掴んで
ごすごすいでると
冴えた刃先に真赤な空映そらばえ
ほう 朝焼だ!

町の工場の弟が
朝陽をいっぱい浴びながら
帽子をふりふりやってくる
待ってたぞ
便りは何だ

鎌をぎっしり握るんだ
ごつごつの節くれ奴!
(『戦旗』一九二八年十一月号に発表)

底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
底本の親本:「戦旗」
   1928(昭和3)年11月号
初出:「戦旗」
   1928(昭和3)年11月号
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年8月29日作成
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