あらすじ
春が来た喜びと、過ぎ去っていく時間の儚さを対比させながら、作者は自身の心の内を語りかけています。桜の花が咲き乱れる風景は美しく、川の流れは力強く、しかし春の到来は永遠ではなく、明日にはもうその姿は変わっているかもしれません。過去の春を思い出し、過ぎ去った日々を惜しむ心情が、繊細な言葉で表現されています。作者は、失われた時を切なく、そして力強く歌い上げています。
ああいかなればこそ、
きのふにかはるわが身の上とはなりもはてしぞ、
けふしもさくら芽をつのぐみ、
利根川のながれぼうぼうたれども、
あすは逢はれず、
あすのあすとてもいかであはれむ、
あなあはれむかしの春の、
みちゆきの夢もありやなし、
おとろへすぎし白雀の、
わがゆびさきにきてしみじみとついばむものを。

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房
   1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行
   1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行
入力:kompass
校正:小林繁雄
2011年6月25日作成
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