あらすじ
つかれきった様子の患者が、診察室を訪れます。医者は、患者の体調を尋ねますが、患者は「よろしい」と答えます。しかし、その言葉とは裏腹に、患者は椅子から飛び上がり、奇妙な姿を見せます。歪んだ脊髄から、ひものような神経がぶら下がり、手首はまるでクラゲのように揺れているのです。その患者は、一体何を隠しているのでしょうか。
三人目の患者は、
いかにもつかれきつた風をして、
べろりと舌をたらした、
お醫者が小鼻をとんがらして、
『氣分はどうです』
『よろしい』
『食物は』
『おいしい』
『それから……』
『それからすべてよろしい』
そして患者は椅子からとびあがつた、
みろ、歪んだ脊髓のへんから、
ひものやうにぶらさがつた、
なめくじの神經だの、くさつたくらげの手くびだの……。
そいつは眞赤(まつか)の殺人者(ひとごろし)だ。
了

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房
   1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行
   1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行
入力:kompass
校正:小林繁雄
2011年6月25日作成
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