あらすじ
晩秋の日は、夕暮れとともに赤く染まり、日は落ちていきます。都会を離れ、故郷に戻ってきた「私」は、かつての面影を探すように、街を彷徨っています。しかし、故郷の風景は、かつてのように美しく感じられず、むしろ寂しさと哀愁を漂わせるように思えます。夕暮れの薄暗がりの中、路傍の便所に佇む「私」は、明日への不安と、故郷への複雑な想いに心を痛めています。
ああ秋も暮れゆく
このままに
故郷にて朽つる我にてはよもあらじ
草の根を噛みつつゆくも
のどの渇きをこらへんためぞ
畠より疲れて歸り
停車場の裏手なる
便所のほとりにたたずめり
日はシグナルにうす赤く
今日の晝餉に何をたうべむ
(故郷前橋にて)

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房
   1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行
   1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行
入力:kompass
校正:小林繁雄
2011年6月25日作成
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