あらすじ
「ありや二曲」は、忘れられない過去と、その記憶が呼び起こす切ない感情が美しく描かれた作品です。別れの時、青く光る月が印象的な場面を起点に、語り手の心は、過ぎ去った時間と今の自分、そして未来への思いを巡らせていきます。そこに現れる「海月」や「つばなの花」は、まるで心の奥底に咲く花のように、儚くも美しい感情を表現しています。短い詩の中に、深い心の動きが表現されており、読者の心を揺さぶる作品です。
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えこそ忘れめや
そのくちづけのあとやさき
流るる水をせき止めし
わかれの際の青き月の出

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雨落し來らんとして
沖につばなの花咲き
海月くらげは渚にきて青く光れり
砂丘をかに登りて遠きを望む
いま我が身の上に
好しと思ふことのありけり

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房
   1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行
   1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行
入力:kompass
校正:小林繁雄
2011年6月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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