あらすじ
長い年月が過ぎたことで、主人公は過去の出来事を全て忘れ去ってしまいました。かつては涙を流していたような、心の奥底に深く刻まれた出来事さえ、もはや思い出せません。そんな中で、主人公は誰にも知られずにどこかへと向かうことを決意しますが、そこには歳月が経ち、自身の老いを感じてしまう切ない現実が待ち受けています。
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年ひさしくなりぬれば
すべてのことを忘れはてたり
むざんなる哉
かばかりのもよほしにさへ
涙も今はみなもとをば忘れたり

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人目を忍びて何處いづこに行かん
感ずれば我が身も老いたり
さんさんと柳の葉は落ち來る
駒下駄の鼻緒の上に落日は白くつめたし

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房
   1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行
   1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行
入力:kompass
校正:小林繁雄
2011年6月25日作成
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