あらすじ
大杉栄は、いわゆる「新しい女」に対する複雑な思いを率直に綴ります。彼女たちは、かつて男性の支配下にありながらも、その枠組みから抜け出し、新たな地位を求めようとしています。しかし、それは真の自由を求めるものではなく、男性社会の中で認められるための戦いなのかもしれません。著者は、真の新しい女とは、社会の不平等に目を向け、自らの解放だけでなく、周囲の人々の解放をも目指す存在であると主張します。男性優位の世界に疑問を抱き、真の意味で「人」としての生き方を模索する、著者の深い考察に満ちた一文です。
 僕はいわゆる新しい女に対して、半ば同感すると同時に、また半ば反感する。
 いわゆる新しい女とは、征服階級の男の玩弄品たり奢侈品たる地位から、一躍し征服階級の直接の一員たらんとする女である。
 彼女等の自覚とは、要するにここまでの自覚に過ぎない。真に人としての自覚ではなく、征服階級の人としての自覚に過ぎない。彼女等の自覚は、自己と周囲との関係をわずかに征服階級の世界に限った自覚である。彼女等は未だ自己の周囲に男女の被征服階級が存在することを知らない。
 真に新しい女は、いわゆる婦人問題などをあまり口にしない。いわゆる婦人運動などにはあまり係わらない。ルイズ・ミッシェルも、エンマ・ゴールドマンも、ヴェラ・フィグネルも、ついにフェミニズムには与からない。彼女等は真に人たるべく、何よりも先きに高等教育や高等職業やまたは参政権を要求しない。彼女等はまた、特に自己完成を、何よりも先きに強調することをしない。彼女等は男の力を借りないことを誇りとするほど幼稚ではなかった。彼女等は自ら進んで男の群に投じた。また彼女等の群に男が投じて来るのを喜んで迎えた。
 真に新しき彼女等は、自己と自己の全周囲との関係を自覚したのであった。

底本:「大杉栄全集 第14巻」日本図書センター
   1995(平成7)年1月25日復刻発行
底本の親本:「大杉栄全集 第14巻 人生について」現代思潮社
   1965(昭和40)年3月31日発行
初出:「近代思想 一巻十号」
   1913(大正2)年7月
入力:笹平健一
校正:植松健伍
2020年8月28日作成
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