あらすじ
お祖母さんは、夜なべをして何かを縫っていました。そこに孫の武ちゃんがやってきて、お祖母さんが押し入れから出してきた行李について尋ねます。お祖母さんは、行李から何かを取り出すのではなく、窓の外に聞こえる「つづれさせ」の鳴き声を気にしていました。武ちゃんは、その鳴き声について質問し、お祖母さんから「つづれさせ」の由来や昔の人々の暮らしについて聞かされます。
 お祖母(ばあ)さんは、あかりの下(した)に針箱(はりばこ)をおき、お仕事(しごと)をなさっていました。そのうち、押(お)し入(い)れから行李(こうり)を出(だ)し、なにか、おさがしになりました。
「おばあさん、なにをなさるの?」と、武(たけ)ちゃんはいいました。
「つづれさせが鳴(な)くから、うかうかしていられません。」と、おっしゃいました。
「つづれさせって?」
「ほら、リーリーと、鳴(な)くでしょう。」
「こおろぎのこと、どうして、つづれさせっていうの?」と、武(たけ)ちゃんが、聞(き)きました。
「あの鳴(な)きごえを、昔(むかし)の人(ひと)は、じき寒(さむ)くなるから、冬(ふゆ)の仕度(したく)をせよ、と聞(き)いたので、こおろぎを、つづれさせというのです。」と、お祖母(ばあ)さんは、お答(こた)えになりました。
「昔(むかし)って、遠(とお)い前(まえ)のことなの?」
「そう、おばあさんの、そのまたおばあさんのころから、夜(よる)が長(なが)くなると、みんな、よなべをしたものです。」
 武(たけ)ちゃんは、だまって、リーリーと鳴(な)く、こおろぎの声(こえ)を、聞(き)いていました。
 いい月夜(つきよ)で、窓(まど)のかきの葉(は)が、黒(くろ)くうつりました。
了

底本:「定本小川未明童話全集 13」講談社
   1977(昭和52)年11月10日第1刷発行
   1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「僕の通るみち」南北書園
   1947(昭和22)年2月
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2019年11月24日作成
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