あらすじ
暗闇に包まれた夜、男はコンテを手に、自身の姿を描き出すことに没頭していました。風の音が響き、遠くで太鼓の音が聞こえる中、男の机の上は明かりに照らされ、彼の顔はコンテに映し出されます。女たちはどこかで何かを話しているようですが、男は気にも留めません。彼の心は、己の内に閉じ込められた孤独と哀しみに支配され、それはコンテに描かれた彼の姿にまで反映されているのです。風の吹いてるお会式の夜でした
打叩く太鼓の音は風に消え、
私の机の上ばかり、あかあかと明り、
女はどこで、何を話してゐたかは知る由もない
私の肖顔は、コンテに汚れ、
その上に雨でもバラつかうものなら、
まこと傑作な自我像は浮び、
軌りゆく、終夜電車は、
悲しみの余裕を奪ひ、
あかあかと、あかあかと私の画用紙の上は、
けれども悲しい私の肖顔が浮んでた。
了
底本:「中原中也詩集」角川文庫、角川書店
1968(昭和43)年12月10日改版初版発行
1973(昭和48)年8月30日改版13版発行
入力:ゆうき
校正:木浦
2013年1月23日作成
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