あらすじ
新宿の屋台で雀を食べた二人の男は、その後も雀について語り合います。一人は鼠と間違えていたことを笑い、もう一人は死んだら雀になりたいと冗談を言います。しかし、体調の優れない方の男は、窓から外に目を向けると、檜葉の樹に雀の姿を見つけ、複雑な感情を抱きます。
 酔ぱらって雀を憶ひ出した二人は新宿まで出掛けた。屋台店の皿に赤裸のままの奴がころがってゐて、若い娘が庖丁で骨を叩いてゐた。一人は一羽の頭を噛ったばかりでもう食はなかった。一人は一串と、頭の欠けたもう一串を平げた。
 頭を食ったばかりの男は、その後食ひ足らなかったことを残念がって改めて食ひに行った。「あの時は酔ぱらってゐて、赤身のままの奴を見たので、つい変な気持がしたのだ。」と、その男は云ってゐた。

 食べものの話が出た時、一人が鼠はおいしいと頻りに云ふので、鼠が食へるかねと相手が問ひ返すと、いや雀の間違ひだと笑った。
 ある女が信仰の話から輪廻思想まで説き出すと、二人の男は遽かにはしゃぎ出した。
「死んだら君は雀になり給へ。」
「いや、願はくば君と一串にされて焼かれたいものだね。」

 あいつも死んだら他の奴と一串にさされるのか――身体の調子が少し悪くて、新宿では雀を憐まなかった方の男が、窓から外を見てゐると、檜葉の樹に雀がゐた。

底本:「普及版 原民喜全集第一巻」芳賀書店
   1966(昭和41)年2月15日初版発行
入力:蒋龍
校正:伊藤時也
2013年1月24日作成
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