あらすじ
故郷を離れ東京で暮らす「彼」は、雪が降り積もる冬の夜、故郷の川を思い出します。春になり故郷に帰った「彼」は、再び川と対面し、そこに流れる水の流れに、そして川にまつわる記憶に心奪われます。しかし、東京から来た友人は、川の風景に全く興味を示さず、二人の間には微妙な距離が生まれます。
 彼の家は川端にはなかったが、彼の生れた街には川が流れてゐた。彼の記憶にも川が流れてゐた。
 雪が東京の下宿屋の庭を埋めた日、床のなかで彼は遠くの川を想った。

 春が来て彼は故郷へ帰って川上を歩いてみた。川にみとれながら、川にみとれた記憶にみとれながら。
 ある日、東京から友達が来たので彼は何気なくその男に川上の風景を案内した。友達は一向興もなさげに彼について歩いた。

底本:「普及版 原民喜全集第一巻」芳賀書店
   1966(昭和41)年2月15日
入力:蒋龍
校正:小林繁雄
2009年8月4日作成
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