あらすじ
「きのふプルウストの……」は、堀辰雄の短編小説です。主人公は、プルウストの小説を読みながら、作中人物の死を思い浮かべます。その死を、かつて親しかった片山君の姿と重ね合わせていく中で、主人公は自身の過去と向き合い、複雑な感情を抱きます。
 きのふプルウストの小説を讀んでゐましたら小説家のベルゴットの死を描いた一節に逢着しました。もうすつかり病氣の重くなつてゐたベルゴットが或る日ルウヴルに和蘭派のフェルメエルの繪を見に出かける。その風景のなかの建物の黄いろい壁を見ながら「ああこれこそ自分の小説に足りなかつたものだ」とおもひながら、その黄いろい壁の美しさに打たれてゐると、突然呼吸が苦しくなつてきて、そのまま倒れて死んでしまふ――そんな一節を讀みながら、僕はひよいと片山君もこんな具合に死なれたのではないかと空想し出しました。

底本:「堀辰雄作品集第四卷」筑摩書房
   1982(昭和57)年8月30日初版第1刷発行
初出:「堀辰雄全集 第六巻」新潮社
   1955(昭和30)年8月30日発行
入力:tatsuki
校正:染川隆俊
2008年1月19日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。