あらすじ
折口信夫は、人形の起源を、人間が中に潜り込む巨大な人形から始まったと考察しています。それは、疫病や風雨などの厄払いとして、神を模倣したものでした。
その後、人間が人形から分離し、手で操る人形へと変化していった過程を、南洋の土人の祭りや日本の伝統的な踊りを通して解説しています。
人形の進化と共に、神との関係や人間の信仰、そして祭りや踊りの意味合いがどのように変化してきたのか、興味深い考察が展開されます。
大きな人形は、人が中に這入つたのが最初である。次いで人が這入らなくなり、体を露出して其形を作るやうになつた。それがやがて、手で使ふ人形に変化した。人間は隠れてゐる。つまり、元は人形と人間が同じだつたが、次第に分離した。
写真で御承知であらうが、南洋辺の土人の祭りでは、人間が恐しい巨人の扮装をする。これは信仰の意味を豊かに持つ。日本でも、南方にはこの風習が残つて居る。北へ行くほど人形がおとなしくなる。
この巨人の人形は、村を訪問して来た神を指す。これを踊り神と称して、人々も一緒に踊る。言ひ換へれば踊り祭りの中心になるのである。人間が仮装してもよし、自由に動かし得れば人形でもよい訣である。旧日本の踊りでは、やつてきた巨人は為方がないから、歓迎するやうにして追ひ出すと言ふ形式が習ひになつてゐる。踊りに捲き込んで快く出るやうにする。後になれば、風の神や疱瘡神の機嫌をとつて送り出すのだが、昔は善悪の神を問はず、共通の送迎の為方があつたのである。
了
底本:「折口信夫全集 21」中央公論社
1996(平成8)年11月10日初版発行
初出:「子供の詩研究(「母性」改題) 第三巻第十一号」
1933(昭和8)年11月
※底本の題名の下に書かれている「昭和八年十一月「子供の詩研究」(「母性」改題)第三巻第十一号」はファイル末の「初出」欄に移しました。
入力:門田裕志
校正:沼尻利通
2013年5月4日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。