あらすじ
豚は人間に飼われ、美味しいものを食べ、太り、快適な生活を送っています。一方、猪は自然の中で生きています。豚は自分の生活を自慢しますが、猪は人間に飼われることへの危惧を語ります。果たして、二人の運命は?
 豚が猪に向って自慢をしました。
「私ぐらい結構な身分はない。食べる事から寝る事まですっかり人間に世話をして貰って、御馳走はイヤと言う程たべるからこんなにふとっている。ひとと喧嘩をしなくてもいいから牙なんぞは入り用がない。私とお前さんとは親類だそうだが、おなじ親類でもこんなに身分が違うものか」
 猪はこれを聞くと笑いました。
「人間と言うものはただでいつまでも御馳走を食わせて置くような親切なものじゃないよ。ひとの厄介になって威張るものは今にきっと罰が当るから見ておいで」
 猪の言った事はとうとう本当になりました。豚は間もなく人間に殺されて食われてしまいました。

底本:「夢野久作全集7」三一書房
   1970(昭和45)年1月31日第1版第1刷発行
   1992(平成4)年2月29日第1版第12刷発行
初出:「九州日報」
   1923(大正12)年11月2日
※底本の解題によれば、初出時の署名は「土原耕作」です。
入力:川山隆
校正:土屋隆
2007年7月21日作成
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