あらすじ
明治維新後、武士は家禄を失い、多くの者は職を失いました。一方、政党員は役人にでもならなければ食べていけません。その現状を嘆きつつ、勝海舟は、ただ給料を得るためだけに官職に就こうとする「猟官」を批判します。中には、財政や外交など、自分の主張を実現するために官職を目指す者もいる一方で、ただ単に生活のために官職に就きたいと考えている者も多くいるというのです。
 併し、何にせよ今度の政変は、第二維新だ。猟官の噂もだんだん聞くが、考へて見れば、是れも無理はない話しさ。それは御一新の際には、武士が皆な家禄を持つて居たから遊んで居ても十分食へたのだ。尤も脱藩の浪士などの間には、不平家も少しはあつたが、大抵な人は所謂恒の産があつたから、そんなに騒がなくつてもよかつたのだ。西郷などは、固より例外だが、それは流石に立派なもので、幕府が倒れた時に、最早平生の志を遂げたのだからこれから山林にでも引き籠つて、悠々自適、風月でも楽んで、余生を送らうと云ひ出した位だ。処が今の政党員は、多くは無職業の徒だから役人にでもならなければ食へないのさ。だからそれは猟官もやるがよいが、併し中には何んの抱負もない癖に、つまり財政なり外交なり、自分の主張を実行するために、就官を望むのではなくて、何んでも善いから月給に有り就きさえすればよいといふ風な猟官連は、それは見つともないよ。

底本:「日本の名随筆 別巻95 明治」作品社
   1999(平成11)年1月25日第1刷発行
底本の親本:「亡友帖・清譚と逸話 〔復刻原本=海舟全集第十巻〕」原書房
   1968(昭和43)年4月20日
入力:ふろっぎぃ
校正:浅原庸子
2006年2月16日作成
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