あらすじ
夫と別れ、五年が過ぎました。今は、夫とは呼べない、しかし夫であった男と、庭の山茶花を眺めています。かつて夫であった男と、今はただの女である私との会話は、清らかで、そして切なく、美しいのです。今年もまた、庭の山茶花が、二人の心を染めるように咲き乱れています。
 ひとの世の男女の
 行ひを捨てて五年
 夫ならぬ夫とともに
 今年また庭のさざんくわ
 夫ならぬ夫とならびて
 眺める庭のさざんくわ

 夫ならぬ夫にしあれど
 ひとたびは夫にてありし
 つまなりしその昔より
 つまならぬ今の語らひ
 きよくしてあはれはふかし
 今年また庭のさざんくわ
 ならび居て二人はながむる。

底本:「愛よ、愛」メタローグ
   1999(平成11)年5月8日第1刷発行
底本の親本:「岡本かの子全集」冬樹社
   1976(昭和51)年発行
入力:門田裕志
校正:土屋隆
2004年3月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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