あらすじ
国語問題は、もはや議論ではなく実践の時代に入りました。しかし、国語問題が抱える領域はさらに広がるでしょう。様々な意見を集め、すべてを解決する方策が国家として採られるべきだと考えています。偏った主張や対立を整理し、国民全体で日本語を豊かで純粋なものにする責任を果たしたいものです。朝日新聞社の「国語文化講座」は、そのような私の考えを実現してくれる事業の一つであり、言葉への愛と、言葉の育成に対する熱意を持つ人々の指針となるでしょう。
 国語問題はもはや論議の時代を過ぎて、着着実践の時代にはひつてゐると云つていいが、私はなほこの問題の含む領域が一層広からんことを望んでゐる関係上、あらゆる方面に於ける意見が出つくして、そのすべてを解決にみちびくやうな方策が国家としてとらるべきだと信じてゐる。局部的な、或は本末を考へない主張の乱立、対峙をこの際一応吟味整理して、真にわれわれの日本語を豊かな純な、力強いものにする責任を国民全体の念願として果したいものである。
 朝日新聞社の『国語文化講座』の企ては、さういふ私の考へをみたしてくれる事業のひとつであつて、われわれの「言葉」を愛し、これを厳しく育ててゆかうとする熱意ある同胞諸君の指針となるものであらうと思ふ。

底本:「岸田國士全集25」岩波書店
   1991(平成3)年8月8日発行
底本の親本:「国語文化講座第一巻 月報1」東京大阪朝日新聞社
   1941(昭和16)年7月20日
初出:「国語文化講座第一巻 月報1」東京大阪朝日新聞社
   1941(昭和16)年7月20日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年1月20日作成
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