あらすじ
動物園を訪れた「彼女」は、様々な動物たちの姿に思いを馳せます。威風堂々とした鷲の意外な一面や、日向ぼっこをする駱駝の姿に安らぎを感じ、神主のような火食鳥や堕落した女性を連想させる駝鳥など、動物たちは「彼女」の心に様々な感情を呼び起こします。眠る獅子の前で絵を描く男や、黒豹の妖艶さに魅了されながらも、熊や川獺への嫌悪感を抱くなど、動物園は「彼女」にとって、動物たちの姿を通して自分自身や周囲の人々を見つめ直す場所となっています。支那の聖人に似てゐる駱駝が、唇をふるはせながら子供にせんべいを貰つてゐる。彼女は、それを見て、やつぱり日向ぼつこをしてゐるときが一番好きだと云つた。
火食鳥は神主。駝鳥は DEMI-MONDAINE のなれの果て。
「さけい」といふ鳥の前で、彼女はまた、「農民ね」と呟いた。
眠つてゐる獅子の檻に近く、長髪の男が、しきりに、「怒れる獅子の図」を描いてゐた。
なまめかしきは黒豹。
熊と川獺は友だちにもちたくない。
了
底本:「岸田國士全集20」岩波書店
1990(平成2)年3月8日発行
底本の親本:「新選岸田國士集」改造社
1930(昭和5)年2月8日発行
初出:「手帖 第一巻第二号」
1927(昭和2)年4月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年10月6日作成
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