あらすじ
国民文芸会が演劇賞を土方与志に贈ったことが話題となり、芸術と社会の接触が活発になる様子が描かれます。フランスでは、アカデミイ・ゴンクウル賞やエルヴイユウ賞が話題となり、芸術賞をめぐる様々な思惑が交錯する様相がわかります。芸術賞の授与が、人種問題や社会風刺など、様々な議論を生み出し、芸術界に新たな光を投げかける様子が、軽妙な筆致で語られています。土方君は高の知れた賞金ぐらゐを貰つたところで何にもなるまいが、かういふことは、もつと世間が問題にしてもいゝ。いろいろの弊害が伴ひ易い制度ながら、兎も角も芸術と社会との接触は、こんな年中行事からでも助長せられるものである。芸術家の私行を云々する興味よりも、一段の光彩と活気とを所謂「文芸消息」に与へることは確である。
中村武羅夫氏や正宗白鳥氏などが、又いやな顔をされるかも知れないが、仏蘭西では此の種の賞金が年に幾つあるかわからない。アカデミイ・ゴンクウルが黒人マランの小説を推賞して大に人種平等論の為に気を吐き、エルヴイユウ賞がエルヴイユウ嫌ひとして知られてゐるコポオの処女劇作「生れ家」に与へられて、皮肉な巴里人を悦ばせた如き、共に最近の芸術賞を取巻く好個の話題であつた。
了
底本:「岸田國士全集19」岩波書店
1989(平成元)年12月8日発行
底本の親本:「都新聞」
1925(大正14)年5月14日
初出:「都新聞」
1925(大正14)年5月14日
入力:tatsuki
校正:Juki
2009年1月20日作成
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